力不足でした。応援してくださった皆様、本当に有難うございました。そして、申し訳ありませんでした。
初甲子園の0-20の大敗から10年。一つ一つ階段を地道に登り、満を持してこの夏に挑みましたが、力ここに及ばず、今日終戦を迎えました。
これまでに考えられない守備のミスが連発。言い訳は一切しません。ただただ期待してくださった方々に、申し訳ない気持ちで一杯です。
「震災を背負う」。言葉では簡単に言えます。今日の結果だけをみれば、「格好いいことを言って、その程度?」と言われるかも知れません。これは甘んじて受けます。ただ、ウチの選手は私たちの誇りです。どこに出しても恥ずかしくない、我々の宝です。
3月11日、未曾有の大震災が起こり、私達もその真っ只中にいました。ライフラインは寸断され、挙句の果ての原発事故。
それ以来、我々は真剣に考えました。「震災で命を亡くした方もいる。その中で自分達は野球が出来る。その喜びを感じよう」。・・・・・・いや待て、そういう簡単なものじゃないだろう・・・。
今年の夏は確かに「特別な夏」です。震災以来、本校に歳内という注目をされる投手がいたと言うこともありますが、とにかくマスコミからの取材が多かった。しかし、選手達は「被災者のために」という言葉は使っていない筈です。「勇気を与えたい」と言う言葉も使っていません。
もし、新聞等にそういった言葉が載っていたとしたら、それは取材陣とのやり取りの中で、そうなっただけだと思います。
でも実際、被災県は本当に苦しい状況にあります。特に福島県は原発事故もあって今なお様々な困難を抱えている。そんな中で、今年の甲子園と言うのは、自分達だけのものではないはず。福島の代表として、我々は何をすべきなのか。我々の使命とは何なのか。
まだ夏の県大会も始まるずっと前から、そう、震災直後から真剣に考えました。
「震災を背負う」。それにはまず、そういったことを背負えるだけの人間になろう。1分1秒でもおろそかにせず、生かされた命に感謝しつつ、どんな困難に直面しても絶対逃げず、ひたむきに、必死になってそれを乗り越える人間になろう。
そう、もし我々が甲子園に出場し、そのうしろ姿で今苦しんでいる方々に希望を感じてもらえたら・・・。「無言のメッセージ」。去年沖縄興南高校が全国制覇を成し遂げ、多くの老若男女が涙したあの光景・・・。興南高校の選手達は間違いなく、沖縄の人々に大きなメッセージを送りました。でもそれは、送りたくて送ったわけではない。結果的にそうなったのだと思うのです。
だから、この大震災を受けて、我々は福島や東北の人たちに、何か大きなメッセージを送りたかった。我々が発信源となって、福島の復興に貢献したかった。今年の「全国優勝を目指す」には、そんな意味が込められていたのです。
若干17・18歳の青年には、重すぎる命題だったのるかもしれません。でも、彼らは真剣に「震災」を背負おうとした。そのために相応しい人間になるべく、私情を捨て、自分を偽らず、どんな困難にも逃げずに闘ってきた。そのために私生活から自らを見直し、それに相応しい人間になろうとした。それこそが、自分達の使命であると信じ・・・。
賛否色々あるかも知れません。でも、我々はウチの選手を誇りに思います。ウチはいわゆるスカウティング活動はしていません。みんな聖光学院で野球をやりたいと言って入学した子達です。だから、我々は現場を離れることはできない。現場を放っておいて、中学校の試合を観にいく訳にはいかないんです。それだったら、1分1秒でも長く、選手と同じ時間を共にして、夢の実現の手助けをしたい。実績が上がるにつれ、他県からの入学者も増えました。それで「外人部隊」とかいう人もいるけど、聖光学院が甲子園に行くために連れて来たんじゃない。甲子園に行きたくて聖光学院を選んで来てくれた選手達。だからこそ、我々は現場の子供達をないがしろにはできないのです。だから我々は現場を離れられないのです。それが、聖光学院を選んできてくれた選手たちに対する礼儀です。
「震災」、あまりに大きなものを背負わせてしまった・・・。そう考えると選手達に申し訳ない気もします。でも本気で背負おうとした子達を負けさせてしまったのは、我々指導者の力不足。選手達に否はありません。でも、どのチームよりも我を捨て、自分以外のために命を使った、命を燃やした、即ち使命感に燃えてこの夏を過ごしたのは、ウチの選手達だったと信じています。
ウチの選手は、我々の誇りです。負けてしまって言うのもおかしいかも知れませんが、本気で福島を、東北を、震災を背負って戦った若者がいた・・・。皆様の心のどこかに、そんな若者の意志を感じて頂けるのであれば、こんな嬉しいことはありません。
試合には負けた。ミスもいっぱいした。結果としては全くダメだったかも知れない。何も伝わらなかったかも知れない。でも、我々しかわからない事かも知れないけれど、彼らの真剣さは、本物だった。それだけは本当。だから我々は、ウチの選手を誇りに思います。
とりとめのない、本当の「ひとりごと」です。選手諸君、本当に有難う。そして、お疲れ様。高校野球史には刻むことはできなかったが、お前たちの本気さは、間違いなく聖光学院の一ページを刻んだぞ!! もう一度言わせてくれ!! 本当に有難う!! (Yokoyama)
※2011甲子園日記は今日で終了いたします。たくさんの方々に読んでいただき、有難うございました。また、「先生のひとりごと」も夏休み中はおやすみさせて頂きます。再開は8月25日の2学期の始業式となります。あらかじめご了承下さい。