2018年4月10日
入 学 式 式 辞
本日は、多くの新入生を送って下さった近隣中学校の校長先生方をはじめ、数多くの来賓各位のご出席の下、聖光学院高等学校第57回入学式を行えますことを、心から感謝申し上げます。例年より早く桜が満開になり、後を追うように桃の美しいピンクの花が咲き、そこに鮮やかな黄色の菜の花も加わって、ここ信達野は一年で最も美しい季節となりました。
新入生の皆さん・保護者の皆様、入学まことにおめでとうございます!ようこそ聖光学院へ!教職員はじめ関係者一同、心から歓迎致します。数ある高校の中から、よくぞ聖光学院を選んで入学してくれました。急速に少子化が進む中、今年も定員230名を越える新入生を迎えることが出来、真に感謝であります。新入生の約三分の一が地元の伊達地区の中学校からの生徒さんです。地元中学校のご理解とお支えがあることを本当に有難く感謝しております。一番遠くからの入学者は岡山県からで、聖光で野球をやりたいとの強い決意で入学してくれました。今年も新入生を迎えて二つの寮は満員となりました。
さて、入学式にあたり3つのことを申し上げ、校長式辞にしたいと思います。
第一は、高校3年間明確な目標を持ち、その実現に向けて日々努力して欲しいということです。しっかり勉強に取り組んで大学に進学すること、たくさん資格を取って優良企業に就職すること、部活で全国優勝をすることなど、目標を掲げ、日々努力してください。
シドニー・オリンピックのマラソンで金メダルを獲得した高橋尚子さん(Qちゃん)は、大学時代までは全く無名でした。中学校の合宿中に、日本代表としてオリンピックに出場した経歴を持つ人が話に来られ、「僕が日の丸を付けることができたのは、練習が終わった後に100メートルを3本だけプラスして練習したからだ」と言ったそうです。そんなことだけで日本代表になれるのかと思いましたが、聞いてしまった以上はやるしかないと、毎日、練習が終わった後で3本多く走り始めたそうです。やがて長距離に転向してからは、10分のジョギングをプラスしました。継続は力なりです!「それを毎日続けていくことによって、結果的に、全然違う景色が見えるところに行き着いたのです」と書いています。練習は嘘をつきません。勉強も嘘をつきません。諸君もQちゃんのように、はっきりした目標を持ち、その目標を実現するため日々努力を続けてください。
第二は、「建学の精神」について、つまりこの学校がどのような思いでつくられ、一貫して何を大切にしているか、についてであります。本校の校門には、日本語で「愛」、ギリシャ語で「アガペー」の字が刻まれています。聖光学院が創立以来最も大切にしてきたことです。教師も生徒も愛をもった人間であって欲しい、という願いがそこに込められています。勉強を頑張って難関大学に合格することも素晴らしいです。部活で全国優勝することも素晴らしいです。でもそれ以上に、何よりも愛を豊かに持つ人間になって欲しいというのが本校創立以来の願いです。先ほど読んで頂いた聖書に、「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」とありました。これは今から2,000年前のイエス・キリストの言葉です。聖書の中でも最も重要な教えとされ、英語では「ゴールデン・ルール」、日本語では「金言」と言われています。もしこの教えに従うことが出来たら、学校に「いじめ」などなくなり、友情が育ち、明るく、楽しく、充実した学校生活になる筈です。
6年ほど前の朝、一人の本校生、彼はサッカー部員でしたが、自転車で福島方面から4号線を学校に向かって走っていました。すると歩道上で苦しがっているおばあさんを見つけました。彼は瞬間どうするか悩みましたが、そのおばあさんを背負って近くの交番に届け、名も名乗らずに登校しました。この生徒の愛の行動に感激したこのおばあさんは、学校にお礼の電話をくださいました。この皆さんの一先輩のしたこと、これこそ〈愛〉です。何の得にもならず、むしろ遅刻など損をするばかりなのに、「・・・にもかかわらず行動を起こした」愛です。
「聖光学院生は挨拶が素晴らしい」、「お礼の言葉がきちんと言えて素晴らしい」と良く褒められますが、これらも「愛」(アガペー)が作り出したものだと思っています。
第三は、我々教職員についてです。希望をもって聖光学院に入学された皆さんを指導する本校の教職員は、自分を磨きつつ、全力で皆さんを指導し、サポートしていくことを約束します。宮沢賢治の作と言われる「私が先生になったとき」という、次のような詩があります。
私が先生になったとき
自分が真実から目をそむけて
子どもたちに 本当のことが語れるのか
私が先生になったとき
自分が未来から目をそむけて
子どもたちに 明日のことが語れるのか
私が先生になったとき
自分が理想をもたないで
子どもたちに いったいどんな夢が語れるのか
私が先生になったとき
自分に誇りを持たないで
子どもたちに 胸を張れと言えるのか
私が先生になったとき
自分がスクラムの外にいて
子どもたちに 仲良くしろと言えるのか
私が先生になったとき
ひとり手を汚さず自分の腕を組んで
子どもたちに ガンバレ・ガンバレと言えるのか
私が先生になったとき
自分が闘いから目をそむけて
子どもたちに、勇気を出せといえるのか
この詩は、「教師たる者は、自分の生活のためにただ漫然と勤めるサラリーマン教師であってはならず、自分が教える教科においても、人格においても、自分の教育に対して責任を感じ、教育への情熱を持ち、自ら生活の基本ルール・習慣を身に着ける闘いを辞さない教師でなければ、教育はできない」と言っています。本校の教師たちは、ここに書かれている教師像を目指して、ひたむきに努力しつつ、君たちの教育・指導に力いっぱい当たることを誓います。
生徒諸君・保護者の皆様、我々はこのような気持ちで新入生を迎え入れました。どうか安心して我々にお任せください。必ず期待に応え、新入生諸君と一緒になって夢の実現に努力することを約束します。
最後に、皆さんの今日からの聖光学院での生活の上に、神様の豊かな導きと祝福がありますように心から祈り願いつつ、校長式辞と致します。
2018年4月10日 聖光学院校長 新井 秀