卒業式 式辞
本日は、卒業する生徒たちを多数送り出してくださった近隣の中学校の校長先生方など、数多くの来賓の皆様のご臨席のもと、第55回卒業式が行えますことを心から感謝致します。
卒業生諸君・保護者の皆様、卒業まことにおめでとうございます!心からお慶び申し上げます。卒業生諸君は今、過ぎ去った3年間の様々な出来事を想い起こしたり、これから始まる新しい人生に夢を描いていることでしょう。皆さんの聖光学院での3年間は、実に目覚しい活躍でした。勉学・部活・資格取得・ボランティア―活動など、あらゆる面で良く頑張りました。部活では多くの部が東北大会や全国大会で活躍しました。団体では剣道部男子、ラグビー部・野球部が全国大会に出場しました。特に野球部は、秋と春の2回続けて東北大会で優勝し、初めて神宮大会に出場し、夏の甲子園には12年連続の出場を果たし大活躍しました。部活に励む生徒たちは日頃の生活でも、元気の良い素晴らしい挨拶や、大雪の時の除雪などで、小中学生の良い模範になると、何度も学校にお礼やお褒めの電話をいただきました。本当に素晴らしい活躍と、愛のこもった3年間でした。
ところで、卒業式は新しい人生の〈始まり〉でもあります。今日から皆さんは自分で選んだ新しい人生を始めるのであります。そのような皆さんに、どうしたら充実した幸せな人生を送れるのかを示唆する三つの言葉を贈りたいと思います。
第一の言葉は「一生勉強・一生青春」です。これは書家であり詩人であり、得度したお坊さんでもある相田みつおさんの言葉です。「人間は一生勉強であり、学び続ける人間はいくつになっても青春を謳歌できるのだ」と言うのです。進学する諸君も、就職する諸君もこれから一生勉強です。「インド独立の父」と呼ばれるマハトマ・ガンジーも「明日死ぬと思って今日を生きよ。永遠に生きると思って今日も学べ」と言っています。
私たちが運転する車は、今までガソリンで走っていましたが、ハイブリット車が増え、電気自動車、更には水素を使って走る車も出て来ました。衝突を防ぐ機能が開発され、無人で走る車の実験も活発に行われています。このように、ものすごいスピードで技術革新が進んでいます。ですから必然的に、車を作る人も、売る人も、修理する人も、勉強しなければ付いてゆけません。このように人間は一生勉強です。
第二の言葉は、「たったひとりしかない自分を、たった一度しかない一生を、本当に生かさなかったら、人間、生れてきたかいがないじゃないか」という言葉です。これは、山本有三の小説『路傍の石』の中で、家が貧しくて進学できず自暴自棄になり、あわや鉄橋にぶらさがって死にそうになって助けられた吾一少年に、担任の次野先生が語る言葉です。今から80年も前に書かれた小説ですが、この言葉は今に生きる諸君にも是非贈りたい言葉です。担任の先生は、「吾一というのはね、われはひとりなり、われはこの世にひとりしかないという意味だ。人生は死ぬことじゃない。生きることだ。自分自身を生かさなくてはいけない。たったひとりしかいない自分を、たった一度しかない一生を、本当に生かさなかったら、人間、生れてきたかいがないじゃないか」と吾一に説く言葉です。
私は諸君にも、世の中にたった一人しかいない自分を本当に生かし切る人生を是非送って欲しく、この言葉を贈ります。どうか、世のため隣人のために、元気一杯喜びと感謝の人生を送ってください。
第三は、先ほど読んでいただいた聖書の言葉「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」です。これは聖書の中で最も重要な教えで、英語では「ゴールデン・ルール」、日本語では「黄金律」と呼ばれる教えです。もしこれが出来たら世の中はどんなに明るく住みやすいものになるでしょうか。今の日本には残念ながら多くの不正が見られます。データを改竄したり、会社のお金を私的に流用したり、我が子を虐待したりです。全て、して欲しくないことです。人間は正々堂々と生きることが大切です。明治の初め、安い労賃で出来た日本の織物はアメリカに大量に輸出されました。すると粗悪品を混ぜて輸出する業者も出て来ました。不正です。そんな時、断固正直な商売を貫いたのが「グンゼ」を創業した波多野鶴吉でした。クリスチャンであった鶴吉は、聖書の教えに忠実に生きようとしたのです。正直な商売の結果、グンゼはアメリカ最大の商社から「グンゼの商品なら検査は不要」と言われるまでの信用を勝ち取ったのです。
君たちの卒業に当たり、私の大切にしている三つの言葉を贈りました。どうかこれらの言葉が、諸君のこれからの人生の「道の光、歩みを照らす光」(『詩編』119:105)になるようにと願っています。
最後にもう一度言います。生徒諸君・保護者の皆さま、卒業まことにおめでとうございます!神様の祝福が皆さんの上に豊かにあり、皆さんが前途洋々の人生を送れるよう祈りつつ校長式辞と致します。
2019年3月1日 聖光学院高等学校校長 新井 秀