今日から『ペトロの手紙一』の勉強に入ります。期待してください。ただ、今日の1章1~2節は、この手紙の差出人から受取人への挨拶の部分なので、聖書から少し離れ、今週歌っている讃美歌の「この世はみな」の作詩者であるバブコックという人の、信仰と生涯について話したいと思います。私の大好きな讃美歌の一つです。
讃美歌を開くと、右上には曲の情報が、左上には詩の情報が書かれています。右上を見ると、「イギリス伝統旋律」とあり、この美しい曲はイギリスで古くから歌い継がれた曲だということが分かります。またラテン語で「Terra Beata」とあり、大地を祝福して下さっている神様への感謝を歌った美しい曲であることが分かります。
左上を見ると、作詩者はバブコックという人だと分かります。彼は1858年に生まれ、1901年に43歳で亡くなった人です。とても若死にです。彼が生まれた1858年は、今から約160年程前で、日本では江戸時代末期、丁度、大老の井伊直弼とハリスの間で「日米修好通商条約」が結ばれた年です。バブコックはイギリスからアメリカに移住してきた家族の出です。小さい頃から運動神経抜群で、学生時代は野球部に入り、ピッチャーで4番バッターとして大活躍しました。また、生まれつき音楽の才能にも恵まれ、ピアノやオルガンを弾き、大学のオーケストラでは指揮者をする程の人でした。やがて牧師になる夢を与えられて大学卒業後、神学校に入学しました。そこで出会ったキャサリンという女性と結婚し、夢に描いていた牧師になりました。二人には2人の子供を与えられたのですが、2人とも小さい内に亡くなってしまい、夫妻の嘆き・悲しみは大変なものでした。バブコックは牧師としていくつかの町の教会で働きましたが、最後にはニューヨーク州の北西、オンタリオ湖とナイアガラ滝に近い町の牧師になりました。私は幸い二度、ナイアガラの滝に行ったことがありますが、その雄大さや周りの自然の美しさは目を見張るものでした。皆さんもいつかきっと行ってください。雨合羽を着て船に乗り、滝壺近くまで行ってみることをお勧めします。水しぶきをいっぱい浴びてキャーキャー大騒ぎの船上でした。
バブコックはこの美しい自然が大好きで、「神様のお創りになった素晴らしい世界を見に行こう!」と、良く夫人のキャサリンを誘って散歩に出かけました。バブコックは43歳の若さで「ブルセラ症」という病気で亡くなりました。良く殺菌されていない牛乳や、チーズ・肉を食べた時に罹る病気です。哀しみの中、妻のキャサリンは夫の遺品を整理しました。すると、たくさんの詩が見つかりました。あまりに素晴らしい神への賛美と感謝の詩なので、妻のキャサリンは何冊かの詩集として自費出版しました。その中の一つが「This is my Father’sworld」でした。5行詩で、1行目と3行目が「This is my Father’s world」で始まり、6番まである詩でした。この詩がクリスチャンたちの目に留まり、このイギリスの古くから愛唱された曲に付けられ、讃美歌361番「この世はみな」が誕生しました。
今でも私たちはバブコックのこの詩を読むことができます。2節を私なりに直訳してみました。「この世は神さまがお創りになったものです。鳥たちは鳴き声で、花々はその香りで、創り主なる神様を褒め称えています。朝日も夕日も美しく空に映え、神様はご自分がお創りになったこれら全てのものを通して、今日も私たちに語りかけています」。勿論これでは讃美歌に合いませんが、バブコックの言いたかったことが分かると思います。彼は、この美しく雄大な自然を創られた神様を心から賛美しているのです。
明日の朝もまた、讃美歌361番「この世はみな」を歌います。43歳の若さで亡くなったバブコック牧師と妻のキャサリンの信仰に思いを馳せて、大声で歌って欲しいと思います。
讃美歌361番 「この世はみな」
1 この世はみな 神の世界、
あめつちすべてが、歌い交わす。
岩も木々も 空も海も
み神のみわざを ほめたたえる。
2 この世はみな 神の世界、
鳥の音 花の香 主をたたえる
朝日、夕日 空に映えて
み神のみわざを 語り告げる。
3 この世はみな 神の世界、
悪魔の力が 世に満ちても、
わが心に 迷いはなし。
主こそがこの世を治められる。