本日は、卒業する生徒たちを多数送り出してくださった近隣の中学校の校長先生方など、数多くの来賓の皆様のご臨席のもと、第53回卒業式が行えますことを心から感謝致します。
卒業生諸君・保護者の皆様、卒業まことにおめでとうございます!心からお慶び申し上げます。卒業生諸君は今、過ぎ去った3年間の様々な出来事を想い起こしたり、これから始まる新しい人生に夢を描いていることでしょう。皆さんの聖光学院での3年間は、実に目覚しい活躍でした。勉学・部活・資格取得などあらゆる面で良く頑張りました。特に野球部は全国初の「夏10年連続甲子園出場」を果たし、ベスト8になりました。愛知東邦高校との一戦は大方の予想を覆し完璧な勝利でした。更に秋の岩手国体では、茨城常総学院に圧勝し堂々全国3位となり、スタンドで応援していた私も感激しました。サッカー部は福島県のFリーグで優勝し、次年度からはプリンスリーグという各県のトップチームへの仲間入りを果たしました。また、日頃の生活では、諸君が元気の良い素晴らしい挨拶をすることや近隣への奉仕活動が小中学生の模範になると、何度も学校にお礼やお褒めの電話をいただきました。本当に素晴らしい活躍と、愛のこもった3年間でした。
ところで、卒業式は新しい人生の〈始まり〉でもあります。今日から皆さんは自分で選んだ新しい人生を始めるのであります。そのような皆さんに、どうしたら充実した幸せな人生を送れるのかを示唆する三つの言葉を贈りたいと思います。
第一の言葉は「一生勉強・一生青春」です。これは書家であり詩人でもある相田みつおさんの言葉です。「人間は一生勉強であり、学び続ける人間は青春を続けられるのだ」と言うのです。諸君もそうです。進学する人も就職する人も、これから一生勉強です。映画俳優の吉永小百合さんは今71歳ですが、映画「愛と死をみつめて」で共演した笠智衆さんの演技の素晴らしさに出会い、今も「女笠智衆を目指したい」と演技の勉強を続けています。かつて「コント55号」で活躍した萩本欽一さんは今75歳です。テレビに出る数を減らして、家が貧乏で学べなかった大学で学びたいと、今は駒澤大学仏教学部の3年生です。月曜から金曜まで休まず通学し、授業は最前列に座って熱心にノートをとりながら聞いているそうです。二人とも「一生勉強・一生青春」の人生です。皆さんも勉強の手を休めないで、職業人としても、一人間としても大いに成長して欲しいと、この言葉を贈ります。
第二の言葉は、「たったひとりしかない自分を、たった一度しかない一生を、本当に生かさなかったら、人間、生れてきたかいがないじゃないか」です。これは、山本有三の『路傍の石』の中で、家が貧しくて進学できず自暴自棄になり、あわや鉄橋にぶらさがって死にそうになって助けられた吾一少年に、担任の次野先生が語る言葉です。今から80年も前に書かれた小説ですが、この言葉は今に生きる諸君にも是非贈りたい言葉です。担任の先生は、「吾一というのはね、われはひとりなり、われはこの世にひとりしかないという意味だ。人生は死ぬことじゃない。生きることだ。自分自身を生かさなくてはいけない。たったひとりしかいない自分を、たった一度しかない一生を、本当に生かさなかったら、人間、生れてきたかいがないじゃないか」と吾一に説く言葉です。私は諸君にも、世の中にたった一人しかいない自分を本当に生かし切る人生を是非送って欲しく、この言葉を贈ります。どうか、世のため隣人のために、元気一杯、喜びと感謝の人生を送ってください。
第三は、先ほど読んでいただいた聖書の言葉「狭い門から入りなさい」です。狭い門から入るとは、一見損をすること、大多数がしないこと、時には馬鹿らしいことです。でもそこにこそ大切さが隠されている、愛が隠されているとイエス様は言うのです。今年は一月に大雪が降りました。部活の生徒諸君がスコップを持って街に飛び出して行き、除雪活動をしました。数日後一人のお婆さんが学校に来られ、涙ながらに言うのです。「本当に助かりました。私一人ではどうにもなりませんでした。誰も助けてくれる人もいませんでした。途方に暮れていた時、聖光の生徒さんが来て、何も言わずに雪かきをしてくれたんです。助かりました!これは少しばかりのお菓子ですがお礼です」と。雪かきしても日当は出ません。弁当も出ません。時には気が付かずお礼も言われません。奉仕活動をしたからと言って成績が上がる訳でもありません。この世の計算では大損です。でもそこにこそ意味があります。そこにこそ本校のモットーである愛(アガペー)があります。これこそ実際に狭い門から入った良い例です。
諸君に贈る三つの言葉を繰り返します。
第一は「一生勉強・一生青春」。相田みつおさんの言葉です。
第二は「たったひとりしかない自分を、たった一度しかない一生を、本当に生かさなかったら、人間、生れてきたかいがないじゃないか」。山本有三作『路傍の石』の中の言葉です。
第三は「狭い門から入りなさい」。イエス様の言葉です。
これからの人生の折々に、これらの言葉が諸君の人生の道標(みちしるべ)になることを期待しています。
最後にもう一度言います。生徒諸君・保護者の皆さま、卒業まことにおめでとうございます!神様の祝福が皆さんの上に豊かにあり、皆さんが前途洋々の人生を送れるよう祈りつつ、校長式辞と致します。
2017年3月1日 聖光学院高等学校校長 新井 秀