本日は、本校同窓会会長であり、「ダイユー・エイト」の創業者・社長である浅倉俊一様を初め、生徒たちを送り出して下さった近隣の中学校の校長先生方など、数多くの来賓の皆様のご臨席のもと、第52回卒業式が行えますことを心から感謝致します。
卒業生諸君・保護者の皆様、卒業まことにおめでとうございます!心からお慶び申し上げます。卒業生諸君は今、過ぎ去った3年間の様々な出来事を想い起こしたり、これから始まる新しい人生に夢を描いていることでしょう。皆さんの聖光学院での3年間は、実に目覚しい活躍でした。野球部は全国初の「夏9年連続甲子園出場」を果たし、優勝した東海大相模を相手に堂々の戦いをしました。敗れはしたものの、清々しく礼儀正しいプレーは全国からお褒めの言葉をいただきました。「被災で苦しむ福島県民に大きな希望を与えてくれた」、との言葉も数多く頂きました。強化指定部のサッカー・女子バレー・剣道も素晴らしい成果を残しました。特に剣道部の諸君は、2年次に女子が、3年次に男子が県で優勝して全国大会に出場しました。マイスターの資格取得でも目覚しい活躍を果たし、好調な進路決定に役立ちました。進学でも、福島大学をはじめ多くの難関大学への合格者を出すことが出来ました。また、諸君が元気の良い素晴らしい挨拶をすることや、除雪などで困っているお年寄りを助けたことなどから、何度も学校にお礼やお褒めの電話をいただきました。本当に素晴らしい活躍と、愛のこもった3年間でした。
ところで、卒業式は新しい人生の〈始まり〉でもあります。今日から皆さんは自分で選んだ新しい人生を始めるのであります。進学する人もいれば、就職する人もいます。大学で野球やサッカーを続け、将来はプロを目指す生徒諸君もいます。でも進学した人も数年後には就職し、自立の生活を始めます。そのような皆さんに、どうしたら充実した幸せな人生を送れるのか、私の考えていることを二つ述べ、校長式辞としたいと思います。
第一は、「世と人に仕える人生を送りなさい。そうすれば諸君は必ず幸せな生活が送れます」ということです。「しあわせ」という言葉を国語辞典で調べると、最初に出て来るのは幸福の幸です。幸は上が土、下が円を表すYの字に横にちょんちょんの字で出来ています。ある人は、上の字は土地を意味し下の字はお金を表す。つまり、人間は土地がありお金があれば幸せだと読める、と言いました。そうでしょうか?毎日のニュースで、お金で人生を狂わせた人のことが報じられています。土地もお金も大切です。でもそれが最優先であってはなりません。「しあわせ」を国語辞典で見ると二番目に出てくるのが、仕え合うと書く「仕合わせ」です。私は、諸君にこちらの幸せを選びとってこれからの人生を歩んで欲しいと願っています。社会と他者のために仕える人生です。必ず幸福な人生が諸君を待っているはずです。
第二は、「思いやり」をもった人生を送って欲しいということです。先ほど読んでいただいた聖書の言葉で言えば、「愛をもって歩む」ということです。私の尊敬する松原泰道という禅宗のお坊さんが、講演の中でこのような想い出を語っています。「私は小学生の頃、友達からいじめられました。僧侶の父が毎週私の頭を剃るので、学校に行くと『坊主、坊主』とからかわれました。泣きながら家に帰る途中、いつも近所の石屋のおじさんが慰めてくれるので、『早く強くなってあいつらを殴り返してやりたい』と言うと、『喧嘩に勝って何が良いものか。悔しい気持ちを勉強に向けて努力しなさい』と諭してくれました。ある時、一番のいじめっ子の家が火事で全焼しました。私は『悪いことをしたからだ。いい気味だ』と思っていたのですが、父は『友達の火事見舞いに行ってこい』と、鉛筆半ダースと画用紙を渡すのです。『あいつは僕をいじめていたんだよ!』と言うと父は、『いや、そうじゃない。火事ですべてを失ってしまった友達への思いやりを忘れてはいかん!』と厳しくたしなめられました。火事見舞いに行った時も、その後学校で会っても、友達からはお礼の一言もありませんでした。でも、卒業式が終わって門で出会った友だちは、心なしか微笑んでいました。やがて彼は、何度も何度も私の方を振り返りながら帰っていきました。その姿を今も覚えております。そして父が言った「思いやり」の気持ちが分かったような気がいたしました」と、語っています。
皆さん、聖光学院にいた時そうであったように、これからも、社会と他者に仕える人生、思いやりのある愛に満ちた人生を送ってください。きっと幸せで有意義な人生を送れます。
最後にもう一度言います。生徒諸君・保護者の皆さま、卒業まことにおめでとうございます!神様の祝福が皆さんの上に豊かにあり、皆さんが前途洋々の人生を送れるよう祈りつつ、校長式辞と致します。
2016年 3月 1日 聖光学院高等学校校長 新井 秀