先日、音楽学校の方と話をする機会があった。この学校の卒業生アーティストには、スキマスイッチ、かりゆし58、クレイジーケンバンドのメンバーや、平井堅、スガシカオ、浜崎あゆみ、倖田來未、ドリカム、大塚愛らのスタジオアーティスト、ツアーアーティストがいるそうだ。彼との話の中で、アーティストで飯を食うためには、「就職」という道が存在しないことを聞いた。
この業界は、人と人との「紹介」で成り立っているそうだ。オーディションも「紹介」が常識だそうだ。「時給3千円で1日やってくれるギタリストいないかな?」(ちなみに彼が知っているアーティストで、最も高額な人は時給15万円だそうだ。)「思い当たる者がいるので、連絡取ってみます。」という具合。とても軽い会話のようだが、紹介者の選考基準を聞いて、意外だったが、ある意味納得した。例えば「A君はギターのテクニックは抜群、ちょっと変り者で個性的。B君はギターのテクニックはA君より劣るが、まじめで思いやりがある。どっちをしょうかいする?」私はA君だと思ったが、迷うことなくB君だそうだ。なぜなら、約束が守れずスタジオに遅れていく、挨拶ができない、まともな会話ができない、敬語が使えない、オレ流の演奏で他のアーティストとの調和がとれない、こんなことがひとつでもあったら、紹介者の面目は丸潰れ。人を見抜く力がないと判断され、「紹介」という道が閉ざされてしまうのだそうだ。
上記のアーティスト達も、音楽学校在学中から、とにかくまじめで、誠実で、礼儀正しく、協調性があり、コミュニケーション能力が高い学生だったそうだ。(これは、企業の人事担当者が、就職を希望する学生の選考基準として、重要視している事とまったく同じである。)ただ、アーティストとしての強烈な印象を発したいがため、奇抜なファッションや個性的な振る舞いを、役者のように演じているのだそうだ。さらに彼は話を続けた。「紹介」を成立させうる、アーティストとしての力量を養うためには、音楽学校以外で、1万時間以上の練習が最低必要で、どんなに優秀なアーティスでも、1万時間以上の練習をしないとプロのアーティストの基準を超えられないそうだ。毎日10時間練習しても3年かかる計算だ。好きな道とはいえ、夢を叶えるためには、とても高いハードルを越えなくてはいけないことに驚いた。さて、聖光学院生の一人ひとりの夢はなんだろう。聖光学院の80/3mindの意味するものを、決して忘れることなく日々努力してほしい。
by MT YK