今日我々日本人にとってバンクーバーオリンピックの最大の注目と言っても過言ではない女子フィギュアスケートのショートプログラム(SP)が行われました。いやー、本当に凄い対決だったと思います。
優勝候補の浅田真央とキム・ヨナが続けて滑るという形となった今回のSPですが、まずは浅田真央がやりました。私はテレビの前でなぜか大緊張。野球の試合ではそんなことないのですが、久しぶりに心臓の鼓動が高鳴ってしまいました。演技が終わったあとの浅田選手の表情が印象的でしたね! そしてキム・ヨナ。彼女は浅田選手が最高の演技をした直後でありながら、これまた自己ベストを更新する完璧な演技。
日本の、そして韓国の注目を浴び、それでもなおかつ自分の力を出し切るその精神的な強さには脱帽です。帰宅後、ニュースを見ると、浅田選手はバンクーバーへの出発当日まで母校中京大のスケートリンクでハードなトレーニングを続けていたとのこと。「もうやり残したことはない」という極限まで追い込んでやり通した自信が、今日の演技につながったのでしょう。そして、キムヨナ選手もまた、同じように「やることは全てやった」状態で今日を迎えたのだと思います。
自信とは「自分を信じること」です。人間は他人のことを欺くことは簡単です。しかし、自分自身を欺くことは絶対にできないのです。彼女たちは、決して妥協せず、「まあこれぐらいで」なんという浅はかな考えもなく、いつも自分と戦い続けていたのでしょう。人間は元来弱いもの。その弱さを克服した者のみが、あのバンクーバーの舞台に立っているのだと思います。成功の反対は失敗ではありません。それじゃあ、何なのか。成功の反対は妥協です。あきらめることです。自分をぬるま湯につからせることです。私は妥協せずに今日まで戦い続けてきた彼女たちに心から敬意を表すると共に、この時点ですでに彼女たちは「成功者」、「勝者」であると思うのです。
浅田選手は演技後の会見で、「金メダルは欲しいが、まず自分自身が完璧な演技をすることが大切」と強調していました。そして、キム・ヨナ選手も「ライバルは自分自身」と言っていました。トップアスリートであるからこそ、敵は自分自身、自分自身に打ち克つことが大切だということを知り尽くしているのです。また、キム・ヨナ選手はこうも言っていました。「天が勝者を決めるのだ」と悟ったとき、「気が楽になった」と。そうです。我々ができる事は、自分自身ができる最大限の努力をすること。そして、その評価は「天」がするものなのです。そう考えているキム・ヨナ選手は「金メダルを獲れなかったことを受け入れる準備は出来ている」と話しています。
何という潔さか!! この潔さが、この覚悟がプレッシャーを跳ねのけて最高の演技をさせたのです。浅田真央選手、そしてキム・ヨナ選手。この素晴らしい二人のアスリートは、お互いのことを「打ち負かしたいライバル」ではなく、「自分を高めてくれる最高のライバル」として認め合っているのでしょう。だからこそ、その対象が自分自身にむかっているのではないでしょうか。そんな、ライバルの存在に、二人は「感謝」し合っているのだと思います。
さあ、明後日はフリースケーティングです。そして、演技の順番は、なんと今度はキム・ヨナ選手が21番目で浅田真央選手が22番目。SPとは逆になったのです。なんという「縁」でしょうか。このニュースを知り、私は全身に震えを感じる程でした。お互いを認め合った二人の対決が待ち遠しくてなりません。もう、どっちが勝ってもいいじゃないですか!! 私はただただ、二人が自分自身を信じ、「最高」の演技をしてくれることを願うだけです。もちろん、他にも最愛の母を亡くしたばかりのロシェット選手や日本の安藤選手、鈴木選手などなど、たくさんの選手が出場します。バンクーバーで戦う全ての選手に、心からエールを送ります!! (Yokoyama)