本日3・4校時目に「命の大切さを学ぶ授業」を行いました。この講演会は福島県警察、社団法人ふくしま被害者支援センターが主催する講演会で、本校の礼拝堂で行われました。
講師は大崎礼子さん。岩手県二戸市に住む大崎さんは2000年(平成12年)11月28日に、交通事故で娘の涼香ちゃん(当時7歳、小学校1年生)を亡くされるという、大変悲しい事故の被害者遺族です。
悲しい出来事は突然やってきました。事故当日、集団で登校するため、集合場所だった自宅前に9人の子供たちが集まりました。その時、頭上を白鳥の群れが飛んでいったそうです。これまでにない光景に、子供たちは感嘆の声。そして被害者となった涼香ちゃんは、お母さんに「靴が足にぶつかって痛いんだ」と訴えたそうで、大崎さんは原因だった靴の先のくぼみをなおしてあげたそうです。その時が、涼香ちゃんと触れ合った最後の時…。
登校していく子供達に「気を付けていってらっしゃい」といつも通りの声をかけると、涼香ちゃんは振り返り、とびきりの笑顔で手を振ったそうです。これが母と娘の別れとなるとは…。
そのすぐあと、通学路で事故は起きました。加害者の運転する自動車が集団登校の列に突っ込んだのです。しかも、その加害者は飲酒運転で、しかも居眠りだったとのこと。この事故で涼香ちゃんを含む2人の尊い命が奪われたのです。
集団登校の列には、涼香ちゃんの2人のお兄ちゃんもいました。先頭には小学校6年生の長男が、そして涼香ちゃんの後ろには小学校4年生の二男が。この、悲惨な事故に遭遇し、そして大切な妹が目の前で息絶えていく、その姿を目撃している…。長男は事故後、「僕が避けなければ、涼香は死なないですんだんだ」と言っていたと…。その事故で受けた精神的苦痛は、言葉では言い表せないものでしょう。
その後も大崎さんは、時折涙を浮かべながら、事故当日の病院でのこと、事故後に周囲からかけられる「頑張って」とか「元気を出して」という言葉がつらくて仕方なかったことなどを、話して頂きました。
ちなみに、加害者は裁判で懲役4年の判決だったそうです。えっ!! 短いですよね…。しかし、当時の法律では最高刑でも5年、罪名は業務上過失致死傷害だったそうです。この話に触れた大崎さんのこんな言葉が印象的でした。「もし、ナイフを持ってその列に切り込んでいったら、それは殺人罪に問われ、死刑や無期懲役になるんじゃないのか、車だったら良いのか…」。まさにその通りですよね。大崎さんはその後、全国の被害者遺族の会の皆様と署名活動を行い、2001年11月28日、そうです、涼香ちゃんの命日の日に法律が変わり、同じような事故の時、危険運転致死障害が適用され、最高刑が20年となったそうです。この事故は、車の事故です。でも飲酒して、そして居眠り…。これはナイフを持って切り込むのと同じだと思います。「殺意」に関しては、飲酒して車を運転する、それがすでに「殺意」を持っていたことと同じではないのか…。話しを聞いて、私はそう感じました。大崎さんの苦悩を察することができます。
講演の終盤には、愛娘涼香ちゃんの生前の可愛らしい姿や事故現場の写真などが紹介されました。大崎さんは、本校生徒に対し、「私達の目に見えない心の傷は、この命が終わるまで続く。安心安全の社会のために、皆さんにも協力して欲しい。私は同じ過ちが繰り返されることのないよう、微力ながら活動していきたい。今日の講演が皆さんの心の中にいつまでも残って欲しい。そして残された遺族の苦悩、目の前の家族が突然いなくなることなどをぜひ想像して欲しい。皆さんには加害者にも被害者にもなって欲しくない。当たり前のことだが、命は一つしかない、1度亡くせば取り返しはつかないこと、この当たり前のことをもう一度心に留め、命を大切にして欲しい」と訴えられました。
講演の最後は、当時小学校4年生で事故に遭遇した二男が作詞作曲した「白鳥」という歌がテープで披露されました。妹涼香ちゃんの分まで生きる、というメッセージの詰まったこの歌に、そして溢れる「愛」に胸をグッと掴まれるような感動を覚えました。
講演を聞いて、私はこの事故を数多くの方々に知ってもらいたいと思いました。また、生徒の中には涙を流しながら聞く者もおり、「命」を考えさせられる、大切な時間となったことは間違いありません。これから卒業すると3年生も車を運転します。今日の話しをずっと忘れずにいたなら、きっと事故は起きないでしょう。大崎さん、本当に貴重なお話し、ありがとうございました。
講演終了後、2年普通科進学コースの菅野郁さん、1年情報電子科山田佳央君が壇上に上がり、花束を贈呈し御礼の言葉を述べました。謝辞を述べた菅野さんは、「普段の生活ではなかなか命の大切さを考える機会はありません。本当にいい機会となりました。将来、車の免許を取った時には、今日の話を忘れずに、交通安全を心掛けたい」と話しました。
本当に貴重な時間を過ごすことが出来ました。
※当時の事故に関する記事はこちらをご覧ください。当時の事故を知ってもらいたいという思いで、勝手にリンクを貼らせて頂きました。何とぞご了承ください。
・http://response.jp/article/2005/03/24/69188.html http://blog.goo.ne.jp/pastec/e/8f4bc02b2733ca2ca5b04f509b109e7d・http://blogs.yahoo.co.jp/anjo_sakae_gray_kiccoro/5873797.html
最後に、生徒の感想文から(抜粋)
・お兄さんの歌が印象的だった。優しい歌声、妹を大切に思う気持などが伝わってきました。今何気なく生きている私たち。1日1日を大切に過ごさなければならないのだと、改めて知りました。
・僕はお父さんがいません。お父さんはガンで亡くなったので、いつ亡くなってもいい状況でした。でも涼香ちゃんは登校途中に車にはねられて突然亡くなったので、涼香ちゃんも悲しいと思います。もっと悲しいのは家族の皆さんだと思います。涼香ちゃんの温かさは忘れて欲しくないです。
・ニュースや新聞を見て、交通事故のことを書いてあっても、私たちは客観的にしか見ていなかったと思います。しかし、涼香ちゃんの話しを聞き、私の考えは180度変わりました。そして私たちにできることは、ほんの少しかも知れないけれど、その「できること」を精一杯にやりたいと思いました。
・私は掛け替えのない命をとても粗末にしていました。「死にたい」「消えてしまいたい」。そんなことを時々考えることがあります。(今日の講演を聞いて)私の考えていたことが、どれだけ最低でしてはならないということを知りました。これからの長い人生の中で、様々な困難や苦悩に立ち向かうことになると思います。その度に、強い心を持ち、辛さに負けないようにしたいです。この広いようで狭い地球の中で、遠くへ逝ってしまった人々のためにも、私はこの命を大切にして、一生懸命生きていきたいと思います。今日は本当にありがとうございました。